2010年度入局の村田寿馬です。東京医科大学卒業後、東京医科大学病院で研修し、当医局に入りました。父が小児科の開業医でしたので、小児科医を志しておりましたが、初期研修4月の最初のローテート先を決めるじゃんけん大会に負けて、全く興味のなかった整形外科の研修をすることになり、いつの間にか整形外科に入局しておりました。父には、申し訳なかったですが、現在は脊椎班のグループ長を任せていただき、大変充実した毎日を過ごさせていただいています。当医局は、以前から厚生労働省の脊柱靭帯骨化症難病研究班に所属しており、私も研究班の多施設共同研究の研究責任者を任せていただき、様々な勉強をさせていただいております。これはひとえに先輩方の社会貢献が評価され、各学会、難病研究班、社会保険委員などの要職につかれてこられたからだと思います。

 

好きな仕事に打ち込めるのも、医局のバックアップをいただきながら、仕事仲間・ライバルとして、よき同僚に恵まれているからだと思います。新宿で働いているので、仕事終わりにしっかりリフレッシュできるのもいいのかもしれません。東医大整形には70年を超える歴史があり、山本教授をはじめ、諸先輩方から若手まで幅広い年代がまんべんなく在籍しており、各世代において適切な範囲の仕事・課題が与えられ、刺激不足・業務過多のいずれにもなりづらい環境があるため、どの世代でも成長するチャンスがあると思います。また、病院の設備投資が非常に手厚く、一昨年に完成した新病院は非常に機能的で、日本の一等地で先進の設備に囲まれて働くことは、当院でしかできない経験です。特に整形外科は手術数・患者数が院内で最も多く、最先端のナビゲーションシステムを導入させていただいていますので、手術難易度の高い症例でも安全に治療を行えています(写真1)。

写真1. 第2世代O-armによるナビゲーションシステム

今回紹介する症例は、頸部痛で近医より紹介された方で、C1-2椎間関節に変形を認めます。頸部痛のみで神経障害がなく、上位頸椎の固定術は非常にリスクが高いですので、十分な保存療法を行い、なるべく手術を行いたくないのが外科医の本音ではないでしょうか。当院では、エコーと透視装置を併用して、椎骨動脈を避けて椎間関節ブロックを施行し、疼痛部位の同定と治療を行いました(写真2)。ブロックによる鎮痛効果は数日しかなく、就業制限もあることから、手術を提案いたしました。

写真2. 椎間関節変形と椎間関節ブロック

 

 

手術はC1-2後方固定(Goel-Harms法)を施行し、周術期合併症なく、疼痛の改善が得られました(写真3)。こうした手術に最先端のナビゲーションシステムを利用でき、安全な医療が提供できることは、大変恵まれた環境ですが、当院では首下がり症候群の矯正固定術やTFTの終糸切離術、難治性疼痛のSCS療法といった独自性のある治療への取り組みも積極的に行っていますので、こうした難治症例への治療の取り組みが日々の診療の精密化につながっているとも思います。今後も、東京医大という場を借りて、難治症例への治療の取り組みや高度医療技術の研鑽に努めていきたいと思います。毎年、未来ある優秀な後期研修医の先生が入局し、場を盛り上げてくれているのも大変刺激になっています。今後もこうしたよい循環が続くことを切に願っています。

写真3. 術後レントゲンとCT